いくら「未来志向」と言っても‥(2)
遺体が発見されたのは2週間後。
Aさんは、しばらくの間風呂に入れなかった。
家族が2週間も冷たい水の中にいた。自分だけ暖かい風呂に入れる訳がない、と。
人には納骨しないと成仏しないと言われたが、成仏してどこかに行ってしまうなら、成仏しないで、そばにいていつも出て来て欲しい、と納骨しなかった。
(私も母を亡くした時、全く同じ感情を持ったので、本当に理解できます。)
火葬した夜、二人が出てきた。会いに来てくれたと、泣いて手を伸ばしたら目が覚めた。
希望は、自分が死んだ時に妻や娘に会えるということだけ。
その為には、魂が存在して欲しい。魂があってこそ再会できる。
それが無いのなら、何のために生きているというのか。
愛する人がいない世界は、想像を絶する地獄。
震災から8年経って、ある日夢で妻が「待っている」と。
夢の中だけが、震災前と同じ気分に戻れる。夢は生きて行く糧である。
人々の希望はこの世の希望。しかし自分の希望は、自分の死後最愛の妻と娘に会えることへの期待。
妻の「待っている」という言葉は、本当の希望であり、生きるパワー。
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死後存続や生まれ変わりの実在性を研究しているとたまに、それは後ろ向きの希望で、現世に生きる本当の希望はこの世での生を喜びに満ちたものにすることで、その為にも潜在意識へ働きかけ、自分と自分の周りの人への働きかけを変える事が重要、と言われます。
親と仲が悪い人は、死んだ後にまで殊更親と会いたくない、と個人的に思うことはあるでしょう。
しかし、今の人生の前と後に自己の生が繋がっていると考えることは、前向きに生きるきっかけにこそなれ、ネガティブな思考にはつながらないのではないでしょうか。
Aさんの体験談はそのことを物語っています。