Beyond Visibility

不思議現象を「根拠を持って」科学する

多次元宇宙6

              さて、心霊現象の一つである心霊写真、これを自然科学の研究対象とするとしよう。1枚持ってきて、仮定として(極めて大胆な仮定だが)それが正真正銘、本物の幽霊を写した写真だったとする。するとそれは、現代科学の再構築を迫られる大問題となる。なにせ霊界なるものは現状、自然科学の言葉で記述されておらず、蓄積された知識もない。機器を使用した霊界との通信(ITCInstrumental TransCommunication)というものがある。その研究者によれば、パソコンやラジオなどを使用したあちらの住人とのコミュニケーションが可能であり、その結果としてこの世とあの世との関係その他の知識が得られたとされている。しかしその多くは経験的なハウツーの積み重ねであって体系だった理論とは言い難い。また仮にそれが真実だとしてもオペレータ依存性がある(要するに誰が操作するかに依存して現象が起こったり起こらなかったりする)という点で再現性に疑義の余地があり、その為自然科学的な観測の結果とは言い難い。よって本稿ではITCを自然科学的アプローチの範疇からは除外することにしたい。心霊写真を前にしてちょっと考えただけでも、あの世がどのようにして存在し得、この世との関係、なかんずく死そして生とはどのようなダイナミクスの所産なのか、またあの世の存在が如何にしてその写真に写り得たのか、そもそも肉眼で見えないものがなぜフィルムを感光させイメージセンサを反応させるのか、次から次へと疑問が湧いてくる。当然ながら問題山積みだ。そして現実には上述の仮定すら成り立たない。すなわち、霊が存在するとしても、目の前にあるその写真が霊を写した本物であると断定することができない。CGその他の贋物であるか否かの判断が困難だからだ。いわゆる霊能者が判定を下すケースはある。しかしそれによって認定されたとしても、私たち一般人には「霊能力」がなく、同じ土俵に立てないのである。自分の能力の無さを認め簡単に「あ、そうですか」と受け入れるわけにはいくまい。その霊能者が本当の事を言っているのかどうかが問われることになるだけであって、これでは問題の移し替えでしかない。
              自然科学の研究対象として心霊写真を扱うことの困難さ、その要因を一言で言うならそれは、上記のITCがはらむ問題点と共通であるが、その再現性の無さということになる。物理学実験における観測結果の特徴はその再現性である。同じ条件なら誰がやっても誤差の範囲内で同じ結果が得られるのである。それが自然現象というものだ。ただこの「同じ条件」を調達する困難さは実験により異なり、検証・追試を行うことが非常に困難なケースはあるのだが、「困難」と「不可能」とではおのずから意味が異なってくる。同じ場所で誰が撮っても写ってしまう、などという心霊写真の事例があれば心霊写真研究なるものももっと進んでいたのかもしれないが、現状ではたまたま写ってしまったものを起点とせざるを得ない。逆に自然現象、カメラの動作(光の写りこみや二重写し等)、人間の心理などで一定の解釈が与えられ、それらの「非心霊的」解釈が再現性を要する検証に耐えるものである為、その解釈が当を得たものとされる。ただ「非心霊的」解釈を付与し難いものが残る点は見ておかないといけない。グレーな部分は残っている。このような再現性のなさの事情は、他の心霊現象についても同様である。では、再現性のある心霊現象などというものが存在するのだろうか。筆者の知る限り、現時点ではそれは鏡視だけである。鏡視とは、アメリカの心理学者で臨死体験の研究で知られるレイモンド・ムーディ博士が古代ギリシャの託宣所、「サイコマンテウム」を参考に研究し発展させた、鏡を使用した故人との対面法である。読んでその名の如く、一定の準備の元、暗い部屋の中に被験者自身が映らないように設置した鏡を被験者が凝視することにより、高い確率で被験者の亡くなった肉親や兄弟、知人と出会えるというものである。被験者達の言葉によると、像は鏡のなかにぼんやりといったものではなく、リアルにそこに当人がいるかのように感得されている。こう書くとはなはだ眉唾な、出来の悪い疑似科学のようにも聞こえるがそうではない。様々な条件下で多くの被験者を用い得られた結果を体系化したれっきとした学術的研究であり、被験者と、被験者が遭遇した故人との間の生々しい、人間味のあるやり取り(言葉が交わされるとは限らないが)が明らかにされている。成果の概要をかいつまんで箇条書きにすると、
被験者は300人以上
4回までの実験でほぼ全員が故人との対面に成功した
被験者の25%は当初会うことを希望していた故人とは異なる故人と遭遇した
被験者の15%は対面した故人と言葉を交わした
被験者の25%は実験中では対面がかなわなかったが、実験後(ほとんどは24時間以内)別の場所で対面した。(つづく)
 
の中のVolume 5, Number 10, October 2013
"Fermion field in the vicinity of a brane"